平成28年12月本部月例研究会のご報告.
12月17日(土)午後3時から水稲荷神社参集室で講師に当会会員の上野修路氏にお出でいただき、「三鈷剣と銀銅蛭巻太刀」をテーマにお話しいただき30人の参加がありました。上野氏は兵庫鎖太刀・黒漆太刀等の中世の刀装や金銅仏・独鈷・水瓶等の仏教美術を復元しています。学生時代に考古学に没頭し、卒業後司法試験の準備、30代になって文化財の復元を仕事と始めました。上野にある東京国立博物館の当時、刀剣室長の小笠原信夫氏の好意で国宝の太刀拵を計測させていただいたが、どこが見ておかなければならないポイントかも分からなかった、と復元の仕事を始めたころのことを話されました。(詳しくは上野氏のホームページhttp://nihonbi.sakura.ne.jpをご覧ください。)
平安時代になると以前とは異なり、密教・神道・道教・陰陽思想等が複合して日本独自の世界観が完成し、社会に起こる様々な現象の原因を解釈するようになり、それへの対応の仕方を考えるようになった。そのことが物の形に影響を及ぼすこととなった。このため平安時代から中世の甲冑類を含め工芸作品は実用の点からだけでは理解できないものがある、と述べられました。
実例として、古代には無かった兜の天辺の穴や、古代には武器として片刃・両刃の両様があった刀剣類が、平安時代になってからは法具としての両刃の剣と俗界における武器としての片刃の太刀・刀等に峻別されるようになる。前者は烏帽子習俗との関係、後者は武器が単なる戦いの道具ではなく、呪術的な意味でも身を守る道具として強く意識されるようになったから、との説明がありました。
当日講師が復元された銀蛭巻太刀について、木製の鞘の上に薄く梳いた韋を巻き、そのうえから銅の板を巻いていくが、その帯板も刃方と棟方、鞘口と鞘尻で微妙に幅を変えているので何度も着脱を繰り返して、幅を調整し、歪を取る等実に細やかな配慮がされている。金具の復元も細部にわたって高度な技術が必要とされ現在のようにルーペの無い時代の工人たちの技術に驚かされる、といった復元に携わった人しか語りえない話を聞くことができました。
当日は28年最後の月例研究会のため、研究会終了後に20人以上の参加で同会場において忘年会を開き、講師を囲み参加者同士の交流を深め合いました。