公益社団法人 日本甲冑武具研究保存会

The Association for the Research and Preservation of Japanese Helmets and Armor

関西日甲研研究会「押付肩上、小札の非常に堅い革作りの復元とこの用語変容の考察」のご報告.

2025年7月27日、関西日本甲冑武具研究保存会(旧・近畿支部)にて「押付肩上、小札の非常に堅い革作りの復元とこの用語変容の考察」と題し研究会が開かれました。講師は永瀬康博さんです。皮革研究の第一人者として知られ1992年には名著「皮革産業史の研究~甲冑武具よりみた加工技術とその変遷~」を上梓されています。今回は、永瀬さんご自身の実証研究の成果を踏まえた、意義深い内容となりました。

一節

「古代の非常に堅い牛革を作る復元実務」では平安時代中期の『延喜式』を依拠して、永瀬さんが実際に革作りの実務を行い、古代の堅い革作りの工程を明らかにされました。反りを生じやすい繊細な革の加工には、革を作る職人と鎧師との連携、信頼関係がなければ確かな鎧は作れないと言及がありました。

二節

「非常に堅い革の用語変化」では「キガワ(生革)」などの用語に注目されました。「キガワ」は永瀬さんへも伝承された用語です。これは中世までさかのぼる堅い革の用語と知りました。また、文献資料に登場する用語を抽出し平安時代~「ツクリワカ」「コヒ」、鎌倉期~「キカワ」、室町時代~「イタメカワ」、江戸時代中期~「ネリカワ」など用語の多様化や、そこから革の加工技術の変容について考察がありました。

研究会には、東京本部会員や東海支部からも参加者があり、盛況のうちにお開きとなりました。

(報告:西角井明彦)

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