平成30年7月本部月例研究会のご報告.
日本甲冑の変遷―古墳時代から平安時代まで
7月8日(日)は、水稲荷神社参集室を会場に公益財団法人とちぎ未来づくり財団埋蔵文化財センター副主幹の津野仁(つのじん)氏を講師にお招きし、考古学の視点から「古墳時代から平安時代までの甲冑」についてお話しいただきました。当保存会の会員の他、非会員の参加もあり大変盛況な研究会となりました。
A4判のレジュメ1枚の他、9枚の資料に添って説明があり、最初に同じ機能をもった物は、基本的な形式を受け継ぎながら少しずつ変化するという「組列(それつ)」という考え方を馬車と3種類の鉄道客車の例と北欧の留針の例を使って説明いただきました。
次に古墳時代の鉄製甲冑の変遷、胴丸式挂甲の小札の威し方の種類と小札の変遷、平安時代の栴檀板の板・鳩尾板の板や兜鉢の変遷をそれぞれ資料の測量図をもとに、時にはA4の紙にマジックで略図を描いて示しながら説明いただきましたので分りやすく講義を聞くことができました。当日、会員の一人が古墳時代の小札を持って来られましたので、その小札が胴のどこの部分に使われていた小札なのかの説明もありました。
また、唐時代の壁画・俑の白描画を基に草摺等の札を威下げる場合、中国と日本の甲冑では重ね方に違いがあることもお話しいただきました。土器の編年をもとに、甲冑・弓・鏃・鐙・轡と幅広く研究をされている講師から、甲冑と弓を例に引きながら物によって変化の速度が異なると説明はありました。発掘調査の成果を踏まえて長年研究を続けてこられた講師の話される内容に、説得力を参加者は強く感じたことと思います。