平成30年11月本部月例研究会のご報告.
テーマ:厳島神社所蔵の甲冑銘文について
11月11日(日)の月例研究会は稲田和彦氏(当会顧問)をお招きしました。講師が準備されたA4版レジュメ4枚・『厳島宝物図解』大内義隆卿甲冑図・他パワーポイントを使用し説明して頂きました。
初めに西暦593年創建とされる厳島神社所蔵の主な甲冑を表記します。(1)国宝 小桜韋黄返威鎧 兜・大袖付 (2)国宝 紺糸威鎧 兜・大袖付 (3)国宝 浅黄綾威鎧 兜・大袖付(4)国宝 黒韋威胴丸 兜・大袖付 (5)黒漆三十八間覆輪筋兜 (6)重文 黒韋肩赤威鎧 兜・大袖付 (7)鉄六十二間筋兜 銘勝正作 (8)重文 赤糸威胴丸具足 (9)重文 銀小札白糸威胴丸具足 (10)鶉韋包紫糸威仏胴具足 (11)赤糸裾紫糸威雲龍文蒔絵仏胴具足 (12)黒漆菱留腰取赤糸威胴丸具足 (13)鉄置手拭形兜 銘春田光定作 (14)紺糸威腹巻 大袖・小具足付 (15)縹糸威二枚胴具足 (16)小桜韋威鎧 兜・大袖付 三浦弥之助作 以上16の鎧・兜の説明をして頂きました。
その中で(1)国宝 小桜韋黄返威鎧の 黄返(キガエシ)は下染に黄色の染料で更に染めることだが、本来黄染韋だった可能性も考えられるとのことでした。また(3)国宝 浅黄綾威鎧の弦走韋は牡丹に不動明王二童子染韋が施されています。これは鎌倉時代の文永・弘安の役(蒙古襲来)あたりからの特色で、鎌倉幕府が全国の寺社に不動明王をまつり異国降伏を祈願するように命令を出した影響からであろうとのことでした。
また(6)重文 黒韋肩赤威鎧の[和州南都住春太光信作]刻名の春太(田)の大変貴重な実写真をスライドで説明頂きました。
先生のお話では厳島神社は火災・盗難が繰り返し起こり、その中でこれだけの文化財が現存しているとの事。神社にとっても国民にとっても幸せな事だと思いました。
最後の質問の時間には色々な質問が出ましたが、稲田先生に丁寧にお答え頂きました。今回の例会も28名の参加者で盛況な研究会となりました。